私道に接する実家を相続する前の3つの注意点

相続した土地

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「祖父母の代から住んでいる実家の前の道が、実は私道だった」「相続した土地を売ろうとしたら、私道の持分がないから通行・掘削の承諾書がないと難しいと言われた」——。長年ふつうの道だと思っていた実家の前面道路が私道で、相続や売却の段になって初めて問題が表に出てくる。こうしたケースは決して珍しくありません。

私はかつて土地の取引や所有者の方とのやり取りに関わる中で、前面道路や権利関係の確認を後回しにすると、あとから土地を動かしにくくなると感じる場面がありました。専門家ではありませんが、その経験から言えるのは、私道の問題は相続する前・売る前に、道路の種類と持分と承諾を確認しておくことで、売却や建て替えの見通しを立てやすくなる、ということです。この記事では、私道に接する実家を相続する前に押さえておきたい3つの注意点を整理します。

実家の前の道が私道だと、なぜ相続で問題になるのか

まず、「私道」とひとくちに言っても種類があります。売却や建て替えでは、大きく次の2つを分けて確認することが出発点です。

ひとつは建築基準法上の道路かどうかです。行政から位置の指定を受けた「位置指定道路」や、一定の条件を満たして特定行政庁が指定した幅4m未満の道である「2項道路(みなし道路)」などは、建築基準法上の道路として扱われます(2項道路では、建て替え時にセットバックが必要になることがあります)。もうひとつは誰が所有しているかです。複数人で共有している「共有私道」なのか、他人が単独で所有していて自分は通行の権利だけを持つのか、で扱いが変わります。

この2点が問題になるのは、家を建て替える・売るときです。建築基準法では、建物の敷地は原則として道路に2m以上接している必要があり、私道がこの「道路」に当たるかどうかで再建築の可否が変わります。また、私道の持分(私道部分の土地を共有している割合)がない場合、通行や、水道・ガスの工事で私道を掘るときに、私道の所有者から承諾書を求められることがあります。持分があれば何でも自由にできるわけではありませんが、こうした話し合いに関わりやすくなります。

私道に接する実家を相続する前の3つの注意点

注意点1:私道の「種類」と「持分」を確認する

最初にやるのは、前面道路がどの種類の道路で、誰の名義かを確認することです。道路の種別(位置指定道路・2項道路など、あるいは建築基準法上の道路ではない通路か)は、市区町村の建築指導課などで確認できます。あわせて、私道部分の登記事項証明書を取り、実家の所有者に私道の持分があるかを確認します。

「ずっと通っていたから大丈夫」と思っていても、持分がまったくない、あるいは私道が第三者の単独名義、というケースもあります。相続してから慌てないために、まずここを押さえておきましょう。

注意点2:通行・掘削・ライフライン工事の権利関係を確認する

次に、通行と掘削(工事)の権利です。通行できる根拠には、私道の共有持分、通行地役権、民法上の通行権など複数の形があります。ただし、売却や建て替えでは「法的に通れるか」だけでなく、買主や金融機関が安心できる書面(通行承諾書・掘削承諾書)があるかも見られます。実務上、水道・ガス・下水を引き込むために私道を掘る工事では、私道の所有者から掘削承諾書を求められることがあります。

ここで誤解しやすいのが、2023年4月施行の民法改正です。この改正で、ライフラインを引くための設備設置権・設備使用権(民法213条の2)が整備されました。ただし、これは「承諾がなくても自由に私道を掘れる」という意味ではありません。必要な範囲に限られ、損害が最も少ない場所・方法を選ぶ必要があり、あらかじめ所有者へ目的・場所・方法を通知するなどのルールがあります。実際、行政の資料でも、制度上は同意がなくても設備を設置できる場合があるとしつつ、住民間の円滑な関係のためにできる限り所有者の同意を得るのが望ましい、とされています。また、設置・使用に必要な費用や、土地所有者に損害が生じる場合の償金が問題になることもあります。「法律が変わったから承諾書は不要」と単純化せず、自治体・水道局や専門家に確認しながら進めるのが安全です。

注意点3:私道持分が相続登記から漏れていないか確認する

見落としやすいのが、私道持分の相続漏れです。私道部分が実家の宅地とは別の地番(別筆)になっていると、宅地とは別の土地として存在していることがあります。しかも、私道が一定の要件で固定資産税の非課税・減免になっていると、納税通知書や課税明細だけでは、その存在に気づきにくいのです。

相続登記のときに私道持分を漏らすと、あとで売却や工事の同意が必要になった段階で「名義が亡くなった親のまま」と判明し、余計な手続きが発生します。相続の前後には、固定資産税の通知だけで判断せず、名寄帳(その人が持つ不動産の一覧)や登記簿で、私道持分の有無を確認しておきましょう。

私道がらみで売却・建て替えに影響すること

私道に接する土地は、条件によっては売却価格や買いやすさに影響することがあります。具体的には、私道持分がない/通行・掘削の承諾書がない/建築基準法上の道路か分からない/ライフライン工事に不安があるといった場合、買主や住宅ローンの審査で、書面での確認を求められることがあります。買主を保護し、金融機関がその土地を担保として評価するために、こうした確認が入るためです。

ただし、対応は不動産会社・買主・金融機関によって異なり、「私道に接している=必ず売れない・大きく減額」というわけではありません。建築基準法上の道路で持分もあり、承諾関係も整っていれば、通常の売却に近い形で進められる場合もあります。逆に、持分がない・承諾が取りにくい・2項道路でセットバックが要る、といった事情が重なって一般の仲介では買い手がつきにくい場合は、こうした事情のある土地も現況で買い取れるか相談できる専門の買取業者に問い合わせる方法もあります。ただし、必ず買い取ってもらえるわけではなく、価格は一般の売却より下がる可能性がある点は理解しておきましょう。

私道の持分や承諾が整わず、一般の仲介では売却が進まない土地でも、現況のまま買い取れるか相談できる相続不動産の買取サービスがあります。仲介での売却と比べる材料になります。

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なお、接道の問題で建て替えできない土地は再建築不可物件を相続したら売る4つの方法、土地の境界そのものが不明なときは相続した土地の境界がわからないときの3つの対処もあわせてご覧ください。

私道部分の固定資産税と、相続登記

私道部分には固定資産税がかかる場合もありますが、道路として不特定多数が利用しているなど一定の要件を満たすと、非課税や減免の対象になる場合があります(多くは所有者からの申告が必要です)。要件や手続きは自治体によって異なるため、市区町村の固定資産税担当課で確認してください。前述のとおり、非課税になっている私道は納税通知書や課税明細だけでは気づきにくいことがあり、相続の際に見落としの原因になります。

また、相続した私道持分も含めて、相続登記(名義変更)が必要です。2024年(令和6年)4月から相続登記は義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が求められ、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる可能性があります。遺産分割で私道持分を取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に、その内容に応じた登記が必要になる点にも注意してください。宅地だけ登記して私道持分を忘れる、ということがないよう、名寄帳で持分を確認したうえで進めましょう。

私道は、道路種別・通行掘削の権利・登記が複雑にからみます。道路の種別や再建築の可否は自治体の建築指導課や建築士、私道の位置・境界は土地家屋調査士、水道・下水の掘削は水道局、登記は司法書士、通行や承諾をめぐる争いは弁護士など、内容に応じて相談先が分かれます。税金・法律の具体的な判断は、税理士・司法書士など専門家に確認してください。

まとめ

私道に接する実家を相続する前は、①私道の種類(建築基準法上の道路か)と持分を確認する②通行・掘削・ライフライン工事の権利関係と承諾書を確認する(民法改正で承諾書が不要になったわけではない)③私道持分が相続登記から漏れていないか、名寄帳・登記簿で確認する、この3点を押さえるのが基本です。

私道は「気づかないまま相続し、売る段になって初めて問題になる」典型です。逆に言えば、相続の前後に道路種別・持分・承諾・登記を確認しておけば、売却や建て替えのときに慌てずに済みます。今日できる最初の一歩は、実家の登記事項証明書と固定資産税の課税明細・名寄帳を取り寄せ、前面道路が私道か、私道持分があるかを確認すること。そのうえで、道路種別は自治体、売却の見通しは不動産会社に相談すれば、次の一手が見えてきます。

よくある質問

私道の持分がない実家でも、売れますか?

売れる場合もありますが、条件によっては買主や金融機関から通行承諾書・掘削承諾書を求められたり、価格や住宅ローン審査に影響したりすることがあります。持分がない=必ず売れない、ではありませんが、売り出す前に、通行・掘削の承諾が取れる見込みかを確認しておくと安全です。承諾が取りにくく一般の仲介で難しい場合は、こうした土地も扱う買取業者に相談する方法もあります。

2023年の民法改正で、私道の掘削に承諾書は不要になったのですか?

不要になったわけではありません。2023年4月施行の改正で、ライフラインを引くための設備設置権・使用権(民法213条の2)が整備されましたが、必要な範囲に限られ、損害が少ない方法を選び、事前に所有者へ通知するなどのルールがあります。実務では、トラブル防止や工事の申請・金融機関の確認のため、今も掘削承諾書を求められることがあります。「法律が変わったから承諾は要らない」と自己判断せず、自治体・水道局や専門家に確認しましょう。

私道部分にも固定資産税はかかりますか?

かかる場合もありますが、道路として不特定多数が利用しているなど一定の要件を満たすと、非課税や減免の対象になる場合があります(多くは申告が必要)。要件は自治体で異なります。なお、非課税になっている私道は納税通知書や課税明細だけでは気づきにくいことがあり、相続のときに私道持分を見落とす原因になります。名寄帳や登記簿でも持分の有無を確認してください。

参考にした公式情報

※制度の要件や運用は自治体・金融機関によって差があり、改正や個別の事情によっても変わります。最新かつ具体的な取り扱いは、上記の公式情報や、土地の所在地の自治体・専門家にご確認ください。

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