換価分割とは?実家を売って兄弟で分ける3注意点

相続した土地

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親が亡くなり、実家を継ぐ人がいない。それなら売って現金にして、きょうだいで公平に分けたい——。この「遺産を売って、その代金を分ける」方法を換価分割(かんかぶんかつ)といいます。一見、売って半分ずつにするだけの簡単な話に見えます。ですが、「誰の名義で売るか」「誰が売却益の税金(譲渡所得税)を申告するか」を先に整理しておかないと、贈与税の扱いや譲渡所得の申告で思わぬ問題が生じることがあります。

私は土地の取引や所有者の方とのやり取りに関わってきました。税の専門家ではありませんが、国税庁・裁判所の情報をもとに、換価分割を選んだあと安全に実行するための注意点を整理します。

換価分割とは?4つの分け方のひとつ

遺産の分け方には、大きく4つあります。

  • 現物分割:家は兄、預金は弟、と現物のまま分ける
  • 代償分割:兄が家を取得し、弟にお金を払う
  • 換価分割:家を売って、その代金を分ける
  • 共有分割:家を兄弟の共有名義にする

このうち換価分割は、誰も実家を欲しがらない・現金にして公平に分けたいときに向いた方法です(どの方法を選ぶかは実家を兄弟で相続したときの分け方4つと注意点)。

進め方の全体像はこうです。①きょうだいで換価分割と分配割合を決める → ②遺産分割協議書に残す → ③売れる名義に相続登記する(被相続人名義のままでは第三者に売れないので、いったん相続人へ登記が必要)→ ④売却 → ⑤代金を約束どおり分配 → ⑥各自が譲渡所得を申告。実家じまい全体の流れは実家じまいの進め方7ステップもご覧ください。

実家を売って分ける前の3つの注意点

注意点1:売る「前」に分ける割合を決める

相続人全員が合意すれば、法定相続分と違う割合で分けても構いません。税務を分かりやすくするためにも、できれば売る前に分配割合を決めておくのがおすすめです。割合を決めずに売ると、原則として売却時の法定相続分で譲渡所得を申告する扱いになります(申告期限までに代金を分割し、全員がその割合で申告すれば認められる扱いもあります)。ただし、あとから割合を決め直しても、それだけを理由に税金の申告をやり直す(更正の請求)ことは原則できません。できるだけ売る前に、きょうだいで割合を決めて紙に残しておきましょう。

注意点2:「誰の名義で売るか」で贈与税に注意

売るために、いったん相続人の名義に相続登記をします。方法は2つあります。

  • 共有名義:相続人らの共有名義で登記し、それぞれが持分に応じて売主になる。所有関係は明快ですが、売却条件を全員で調整する必要があります。
  • 代表者1人の単独名義:手続きは楽ですが、注意が必要です。単に代表者の名義にしただけで税金がかからなくなるわけではありません。 国税庁は、換価(売却)のための便宜的な単独登記で、分割内容に従って実際に代金を分配した事例では、贈与税の問題は生じないとしています。逆に言えば、協議書にひとこと書けば必ず回避できるわけでも、書かなければ自動的に課税されるわけでもありません。 実際の課税関係は、協議の内容・登記・分配の実態によって変わります。「便宜の登記であること」と「分配割合」を協議書に明記し、実際にそのとおりに分けることが大切で、協議書は重要な証拠になります。単独名義を使う場合は、事前に税理士・司法書士へ確認してください。

名義の選び方は、贈与税の判断にも関わるため、司法書士・税理士に相談すると安心です。

注意点3:譲渡所得税は「売った代表者だけ」ではない

適切な換価分割として売却し、換価代金の取得割合が売却時までに決まっている場合は、各相続人が、その取得割合に応じて譲渡所得を申告します。代表者の名義で売ったからといって、代表者だけが全額を申告するとは限りません(取得割合が未確定のまま売った場合は、原則として売却時の法定相続分で申告する扱いになります)。実家の取得費は、原則として親(被相続人)が買ったときの金額と時期を引き継ぎます。取得費を確認する資料になるので、古い売買契約書や領収書がないか探しておきましょう(見つかれば実際の取得費を使える可能性が高まります)。

なお、一定の要件を満たせば、相続空き家の3,000万円特別控除(対象の家屋・敷地を取得した相続人が3人以上なら1人あたり最高2,000万円。ほかに建築時期・売却期限・売却額などの要件あり)や、取得費加算の特例が使えることがあります(同じ譲渡では併用できず、どちらが使えるか・どちらが有利かは税理士に試算を)。売却益と税金は相続した家を売るときの税金3つと節税の特例、売却後の申告は相続した不動産を売却した後の確定申告3手順もご覧ください。

換価分割は、名義の選び方(贈与税)と各自の譲渡所得税・特例の判断がからみます。
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遺産分割協議書で決めておきたいこと・売却が進まないとき

換価分割では、遺産分割協議書に次の点を決めて残しておくと、税務でもトラブル防止でも安心です。

  • 対象の不動産
  • 換価分割すること(代表者名義にするなら「売却手続きのための便宜」であること)
  • 売却代金の分配割合
  • 仲介手数料・解体費・測量費などを誰がどの割合で負担するか
  • 分けるのは「売却価格」か「費用を引いた手取り額」か(ここは実際にもめやすい)
  • 代金をいつまでに分配するか

あわせて、いくらで売るか・どの不動産会社に頼むか・値下げを誰が判断するか、といった売却の進め方も先に共有しておくとスムーズです。特に共有名義で売る場合、途中で一人が条件に反対すると止まりやすいためです。

なお、きょうだいの一人が売却に反対すると、多数決で勝手に売ることはできません。任意売却による換価分割には全員の合意が必要で、合意できなければ遺産分割調停・審判へ進みます(審判で競売による換価が命じられる場合もあります)。また、いったん協議が成立したのに代表者が約束どおり代金を分配しない場合は、成立した合意の「履行請求」の問題で、新たな遺産分割調停とは別です(支払いを求める民事の手続きになることもあります)。税金・法律の具体的な判断は、税理士・司法書士など専門家に確認してください(税は税理士、登記は司法書士、相続人間の争いは弁護士が相談先です)。

まとめ

実家を売ってきょうだいで分ける換価分割は、公平に分けやすく、共有の塩漬けも避けられる方法です。ただし「売って半分ずつ」と簡単に考えず、①売る前に分ける割合を決める②誰の名義で売るか(共有か代表者単独か)を決め、代表者名義なら便宜と分配を協議書に明記する③譲渡所得税は各自が取得割合に応じて申告する——この3つを押さえてください。

今日できる一歩は、「実家を売った代金を、誰が何割で受け取るか」「費用を引く前と後、どちらを分けるか」をきょうだいで話し、紙にすることです。金額が大きく、贈与税・譲渡所得税がからむので、名義や特例は動く前に税理士・司法書士に相談すると安全です。

よくある質問

代表者1人の名義で売ったら、その人が全額に贈与税・譲渡所得税を払うことになりますか?

適切な換価分割として行われている場合は、代表者だけが全額を負担するとは限りません。国税庁は、換価のための便宜的な単独登記で、分割内容に従って実際に代金を分配した事例では、贈与税の問題は生じないとしています。譲渡所得税も、換価代金の取得割合に応じて各相続人が申告します。ただし「単独名義にすれば自動的に非課税」ではなく、実際の課税関係は協議内容・登記・分配の実態によって変わります。単独名義を使う場合は、事前に税理士・司法書士へ確認してください。

売ってから、分ける割合を決めても大丈夫ですか?

できれば売る前に決めるのがおすすめです。割合を決めずに売ると、原則は売却時の法定相続分で申告する扱いになり、あとから割合が決まっても、それだけを理由に申告をやり直す(更正の請求)ことは原則できません。取得割合は、売る前に決めて協議書に残しておきましょう。

きょうだいの一人が売却に反対しています。多数決で売れますか?

多数決では売れません。任意売却による換価分割には全員の合意が必要で、まとまらなければ家庭裁判所の遺産分割調停・審判へ進みます(審判で競売が命じられる場合もあります)。まずは全員で売却と分配の条件を話し合うことが必要です。

参考にした公式情報

※制度の要件や税額は改正や個別の事情により変わります。最新の情報は上記の公式情報や、税理士・司法書士・弁護士など専門家にご確認ください。

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