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「相続した実家が、まさかの『再建築不可』だった」。いざ売ろうとしたら不動産会社に「うちでは扱えない」と断られた、査定額が二束三文だった、地方の物件では逆に「引き取り料」を求められた——。再建築不可の土地を相続した方からは、こうした戸惑いの声が少なくありません。今建っている家はそのまま使えるのに、一度壊すと同じ場所に建て替えられない。だからこそ買い手が限られ、仲介に出しても長く売れ残ってしまうのです。
私はかつて土地の取引に関わる仕事をする中で、土地の条件によって扱い方が大きく変わる場面を見てきました。専門家ではありませんが、その経験から言えるのは、再建築不可だからといって「もう手放せない」わけではない、ということです。この記事では、なぜ建て替えができないのかという理由と、状況に合わせた4つの選択肢を整理します。
なぜ「再建築不可」になるのか(接道義務という壁)
まず、仕組みを知っておくと、次の一手を考えやすくなります。
建築基準法では、建物を建てる敷地は「建築基準法上の道路に、2m以上接していなければならない」という接道義務が定められています。一般には幅員4m以上の道路が基本ですが、幅4m未満でも「2項道路」など建築基準法上の道路とみなされるものもあるため、正確には役所の建築指導課などで確認が必要です。これは、火災や災害のときに避難路や消防車の通行を確保するための決まりです。
相続した実家が、この条件を満たしていない——例えば、敷地が道路にほとんど接していない、接している道が建築基準法上の「道路」と認められない、といった場合、既存の建物はそのまま住み続けられても、一度取り壊すと、原則として同じ場所に新しく建てることができません。 これが「再建築不可」と呼ばれる状態です。
古い分譲地や、昔ながらの住宅密集地では、こうした土地が珍しくありません。ご自身の意思とは関係なく、何十年も前の土地の区画によって、今このような制約を受けているだけ、というケースがほとんどです。
再建築不可だと何が困るのか
再建築不可の土地は、次のような理由で仲介での売却が難しくなりがちです。
- 住宅ローンが組みにくい……金融機関は担保価値を重視するため、再建築不可物件は融資の対象外とされることが多く、買い手側の資金調達のハードルが上がります。
- 建て替えができない……古くなった建物を壊して新築、という選択肢が使えません。大規模なリフォームにも制限がかかる場合があります。
- 買い手が限られる……現金で購入できる方や、隣接地を持つ方など、対象になる買い手がそもそも少なくなります。
こうした事情から、通常の仲介では、同条件の土地に比べて価格が大きく下がる傾向があります。 民間の解説では通常価格の5〜7割程度を目安とすることもありますが、これは公的な統計ではなく、立地や接道改善の可能性によって大きく変わります。
まず「本当に再建築不可か」を確認し、原因を見分ける
選択肢を考える前に、大切な確認があります。まず、本当に再建築不可なのかを、役所の建築指導課や建築士・不動産会社に確認することです。同じ「再建築不可」でも、原因が「道路の幅が少し足りないだけ」なのか、「そもそも建築基準法上の道路に接していない(無接道)」なのかで、その後の選択肢は大きく変わります。前者はセットバックなどで再建築可能になる余地があり、後者は難しくなる傾向があります。自己判断せず、まず正確な状況を把握することから始めましょう。
再建築不可を相続したときの4つの選択肢
原因を確認したうえで、状況に応じて次の4つを検討してみてください。
1つ目は、再建築できる状態に変える方法です。
接道義務を満たすように土地の条件を変える方法がいくつかあります。隣地の一部を買う・借りる・等価交換して建築基準法上の道路に2m以上接する状態をつくる、私道を「位置指定道路」として扱えないか確認する、道路の幅が足りない場合に敷地を後退させる「セットバック」をする、といった方法です。セットバックした部分は建築敷地として使いにくくなり、建てられる面積が小さくなる点にも注意が必要です。費用も測量・分筆・撤去物の有無で大きく変わり(数十万円〜100万円超になることも)、個別の見積もりが必要です。また、昔「43条但し書き許可」と呼ばれた制度(現在は主に建築基準法43条2項2号許可)で、道路に接していない土地でも、交通・安全・防火・衛生上の支障がないと特定行政庁が認め、建築審査会の同意を得た場合に、例外的に建築できることもあります。ただし、いずれも隣地の同意や自治体の個別判断が前提で、必ず実現できるとは限りません。建築士や土地家屋調査士など専門家に、まず可能性を確認してもらうのが安全です。
2つ目は、今の建物を活かして住む・貸すことです。
建て替えができないだけで、今建っている建物に住み続けたり、リフォームして人に貸したりすること自体は可能な場合があります。ただし、建物の安全性、リフォームできる範囲、賃貸に出す場合の修繕責任や借主への説明事項は、着手前に確認が必要です。すぐに手放す予定がないなら、当面はこの状態を維持する、という選択肢も現実的です。
3つ目は、隣地の所有者に買い取ってもらうことです。
再建築不可の土地は、一般の買い手には敬遠されがちですが、隣接する土地の所有者にとっては利用価値が出る場合があります。自分の敷地と合わせることで再建築可能な広さ・形になったり、駐車場や庭として活用できたりするためです。まずは隣地の方に打診してみる価値はあります。ただし、必ず買ってもらえるわけではなく、買い手が限られる分、価格は相手の事情に左右されやすい点は頭に入れておきましょう。
4つ目は、訳あり不動産専門の買取業者に相談することです。
再建築不可・共有持分・借地権など、通常の仲介では扱いにくい「訳あり」の不動産を専門に買い取っている業者があります。再建築ができない前提での買取価格になるため、一般的な相場より低くなりますが、条件が合えば、仲介より短い期間で整理できる場合があります。ただし、状態や地域によっては買取が難しい、条件付きになる、といったこともあります。
再建築不可・共有持分・借地権など、「他社で断られた」という物件でも、訳あり不動産専門の買取なら、相談できる場合があります。
まずは買取の可能性や価格の目安を確認してみましょう。
PR・ワケガイ
複数の共有者がいる土地の場合は、共有名義の土地で起きる3つのトラブルと解消法も合わせて参考にしてください。
どの方法でも手放すのが難しい場合は、相続放棄が頭に浮かぶかもしれません。ただし、相続放棄は再建築不可の土地だけを選んで手放せるものではなく、預貯金などプラスの財産も含めてすべて相続しない手続きです。また2023年の民法改正で、放棄した時点でその家を現に占有している場合は、次の相続人などに引き渡すまで保存義務が残ることがあります。「相続を知ってから原則3か月」という期限もあるため、家を処分・利用する前に弁護士へ相談してください。
なお、接道義務の扱いや例外の可否は、自治体・道路の種類によって判断が分かれます。建築可否は自治体の建築指導課や建築士、測量・境界は土地家屋調査士、登記は司法書士、売却は不動産会社、相続放棄や紛争は弁護士など、内容に応じて相談先を選びましょう。税金・法律の具体的な判断は、税理士・司法書士など専門家に確認してください。
よくある質問
再建築不可の土地は、絶対に建て替えできませんか?
「絶対に」とは言い切れません。セットバックや隣地の買取、43条2項2号許可など、状況によっては再建築が可能になる場合があります(詳しくは本文の選択肢1をご覧ください)。ただし、いずれも自治体の判断や隣地の協力が前提になるため、まず建築士や役所に可能性を確認してもらいましょう。
再建築不可の土地は、いくらくらいで売れますか?
物件の立地・面積・接道の状況によって大きく異なるため、一概には言えません。一般的に、同条件の再建築可能な土地に比べて価格は下がる傾向があり、仲介より買取のほうがさらに価格は抑えられる傾向にあります。正確な金額を知るには、訳あり不動産に対応した業者に査定を依頼して、実際の反応を確認するのが確実です。
相続した後、そのまま放置してもよいですか?
おすすめしません。空き家のまま放置すると、老朽化が進んで倒壊や近隣トラブルのリスクが高まります。また、放置して状態が悪化し、市区町村から管理不全空家等または特定空家等として勧告を受けると、敷地の住宅用地特例が外れ、土地部分の固定資産税負担が増える可能性があります。詳しくは管理不全空き家とは?固定資産税6倍を防ぐ3つの対応もご覧ください。すぐに結論を出せなくても、まずは選択肢を知り、方針を決めておくことが大切です。
参考にした公式情報
- e-Gov法令検索「建築基準法」(接道義務・道路の定義)
- 国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」(PDF)
- 裁判所「相続の放棄の申述」
- 法務省「相続の放棄をした者の義務(改正民法)」(PDF)
※接道義務の扱いや43条2項2号許可の可否は、自治体・道路の種類によって判断が分かれます。最新の情報は、お住まいの自治体の建築指導課や上記の公式情報でご確認ください。

