相続した家を売るときの税金3つと節税の特例

相続した土地

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親が亡くなって引き継いだ実家を、売ることにした。でも「売ったお金に、どれくらい税金がかかるのか」がまるで見えない。「相続税を払ったのに、売ったらまた税金がかかるの?」「そもそも親がいくらで買った家か分からない。それで税金はどう計算されるの?」——調べ始めると専門用語ばかりで、不安だけが残る。そんな心当たりはないでしょうか。

先に、安心できることを一つ。相続した家を売っても、売却額の全部に税金がかかるわけではありません。 税金がかかるのは、あくまで「売って出た利益」に対してです。しかも、条件が合えば税金を大きく減らせる特例もあります。この記事では、土地に関わってきた立場から、相続した家を売るときにかかる税金3つと、使えれば大きい2つの特例を整理します。私は税の専門家ではないので、最終的な判断は必ず税理士に確認してください。本記事は一般的な情報の整理です。

まず「相続税」と「売るときの税金」は別物

いちばん多い誤解から解いておきます。相続で家を引き継いだときにかかるかもしれない相続税と、その家を売ったときにかかる税金は、別のものです。二重取りではありません。

  • 相続税……親から財産を受け継いだ「そのとき」にかかる可能性がある税金。国税庁の令和6年分の申告事績では、相続税の課税割合は10.4%でした。つまり、実際にかかるのは全体の1割程度です。
  • 売るときの税金……受け継いだ家を売って「利益が出たとき」にかかる税金。

つまり、相続税を払った人も払わなかった人も、売って利益が出れば、売却時の税金は別途考える必要があります。逆に、利益が出なければ、譲渡所得に対する所得税・住民税はかからないことがあります。ただし、売買契約書の印紙税や、登記にかかる登録免許税などは別に発生する場合があります。まずはこの切り分けを頭に置いてください。

なお、相続税そのものがかかりそうかは、実家を相続したら相続税はかかる?3つの目安で整理しています。

相続した家を売るときにかかる税金3つ

相続した家を売るときは、売却益にかかる税金と、契約・登記の手続きでかかる税金を分けて考えます。主に確認したいのは、次の3つです。

1. 譲渡所得に対する所得税・住民税(利益が出たとき)
これがメインです。売却で出た利益(譲渡所得)に対して、所得税・住民税(と復興特別所得税)がかかります。利益は、ざっくり「売った金額 −(買ったときの金額+売るための費用)」で計算します。ここで大事なのは、税率が所有期間で変わることです。売った年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていれば「長期」、5年以下なら「短期」で、長期のほうが税率は低くなります。相続の場合、亡くなった方が持っていた期間を引き継いで数えます。 親が長く持っていた家なら、多くは長期にあたります。

2. 印紙税
紙の売買契約書を作成する場合に、契約金額に応じてかかる税金です。一定の期間は軽減措置もあります。金額はそれほど大きくありませんが、見落とさないようにしておきます。

3. 登録免許税(売却前後の登記手続き)
これは売却益にかかる税金ではなく、登記の手続きでかかる税金です。相続人が売却を進めるには、通常、先に相続登記(名義変更)をして名義を整える必要があり、このとき登録免許税(原則、固定資産税評価額の0.4%)がかかります。住宅ローンが残っていた場合の抵当権抹消登記などでもかかることがあります。

ここで、多くの人がつまずくのが「買ったときの金額(取得費)が分からない」問題です。親がいつ、いくらで買ったかの資料が見つからないと、利益を計算できません。この場合、売った金額の5%を取得費とみなす方法もありますが、実際の取得費が5%より大きかったはずのケースでは、取得費が低く見積もられ、税額が増えやすくなります。まずは購入時の売買契約書や領収書を探すのが得策です。

使えれば大きい2つの節税特例

利益が出そうな場合でも、条件が合えば税金を大きく減らせる特例があります。代表的なのが次の2つです。

空き家の3,000万円特別控除
亡くなった方が一人で住んでいた家(空き家)を相続して売る場合、一定の要件を満たせば、利益から最高3,000万円まで控除できる制度です。これが使えると、多くのケースで税金がぐっと下がります。ただし要件が細かく、たとえば「昭和56年5月31日以前に建てられた家であること」「相続開始から3年目の年末までに売ること」「売却代金が1億円以下であること」「一定の耐震基準を満たすこと、または取り壊して売ることなど」があります。なお、令和6年以後の譲渡では、譲渡後、一定の期限までに耐震改修や取壊し等を行う場合も対象になることがあります。また、相続人が3人以上のときは、1人あたりの上限が2,000万円になります。

取得費加算の特例
相続税が課税された人が、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに(目安として、相続税の申告期限から3年以内に)相続した家や土地を売る場合、納めた相続税の一部を「取得費」に加えられる制度です。取得費が増えるぶん、利益が圧縮され、税金が下がります。

注意したいのは、同じ譲渡については、空き家の3,000万円特別控除と取得費加算の特例は、基本的にどちらか一方の選択になることです。両方の要件に当てはまる場合は、どちらが有利かを比べて選ぶことになります。判断は個別性が高いので、売る前に一度、税理士に見てもらうのが安全です。

利益が出そうか、特例が使えるかの判断は、取得費や売る時期で大きく変わります。
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売る前にやっておく順番

税金で損をしないために、順番も大切です。

まず、相続登記(名義変更)を済ませる。 相続人が売却を進めるには、通常、先に相続登記をして名義を整える必要があります。「いざ買い手がついた」ときに名義変更から始めると、買い手を待たせることになります。売却を考えているなら、早めに名義を整えておきます。

次に、取得費の資料を探す。 親が買ったときの売買契約書・領収書・購入当時のパンフレットなどです。これがあるかないかで、税額が変わることがあります。

最後に、特例が使えるか・期限に間に合うかを確認する。 空き家の3,000万円特別控除は「相続開始から3年目の年末まで」、取得費加算は「申告期限の翌日から3年以内」と、いずれも期限があります。売却は、相続登記・相続人どうしの合意・買い手探しに時間がかかるため、期限が近づいてから動くと間に合わないこともあります。

売却そのもので悩んでいる場合は、実家が売れない3つの理由と今すぐできる対策相続した土地がいらない時の3つの手放し方もあわせてご覧ください。

売却時の税金は税理士、登記は司法書士、相続人間で争いがある場合は弁護士など、内容に応じて専門家に確認してください。本記事は一般的な情報の整理であり、税額や特例の適用は個別の事情によって異なります。

まず今日できること

むずかしく考える前に、できるのはシンプルな2つです。1つは、親が家をいつ・いくらで買ったかの資料を探すこと。もう1つは、相続が始まった日(親が亡くなった日)を確認しておくことです。特例の期限は、この日を起点に数えます。この2つが分かるだけで、税理士への相談が一気にスムーズになります。

相続した家の売却は、税金の見通しを先に立てるほど、選べる手が増えます。あわてて売る前に、まずは足元の資料を整えておきましょう。

よくある質問

Q1. 相続した家を売ると、相続税とは別に税金がかかりますか?

売って利益が出た場合は、相続税とは別に、譲渡所得に対する所得税・住民税などがかかることがあります。相続税は「受け継いだとき」、売却時の税金は「売って利益が出たとき」のもので、別物です。逆に利益が出なければ、譲渡所得に対する所得税・住民税はかからないことがあります。ただし、契約書の印紙税や登記にかかる登録免許税などは別に発生する場合があります。

Q2. 親がいくらで買った家か分かりません。税金はどうなりますか?

買ったときの金額(取得費)が分からないと、利益が計算できません。この場合、売った金額の5%を取得費とみなす方法もありますが、実際より低く見積もられ、税額が増えがちです。まずは購入時の売買契約書や領収書を探してみてください。見つからないときの扱いは、税理士に相談すると確実です。

Q3. 空き家の3,000万円特別控除は、どんな家でも使えますか?

いいえ。建てられた時期、相続直前の居住状況、売る時期、売却代金の上限など、要件が細かく決まっています。相続人が3人以上のときは上限が2,000万円になるなどの違いもあります。取得費加算の特例とは基本的にどちらか一方の選択になるため、どちらが有利かも含め、売る前に税理士に確認するのが安全です。


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