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「父が亡くなって実家が空き家になった。火災保険の更新案内が来たけれど、どうすればいいのか」「空き家は火災保険に入れないと聞いた」——。遺産分割も相続登記も終わっていないのに、保険の満期だけは待ってくれない。相続後の空き家について、Q&Aなどでも見られる悩みです。
先に結論を書きます。「空き家は火災保険に入れない」は正確ではありません。 空き家であることだけを理由に、全国一律で契約できないと定めた法令はありません。ただし、親が住んでいたときの住宅用の契約を、何もせずそのまま続けられるとも限りません。私は土地の取引や所有者の方とのやり取りに関わってきました。保険の専門家ではありませんが、日本損害保険協会・財務省・法務省などの公開情報をもとに、相続した人が何をどの順で確認すればいいかを整理します。
「入れない」のではなく「扱いが変わることがある」
火災保険には、建物の用途による区分があります。損害保険料率算出機構の整理では、住居としてのみ使用する建物が「住宅物件」、住宅物件・工場物件・倉庫物件のいずれにも当たらない建物が「一般物件」です。
誰も住まなくなった実家は、居住の実態がないとして一般物件として扱われることがあります。ただし、空き家になれば自動的に一般物件、という全国共通のルールは確認できませんでした。空き家の状況や保険会社によって判断が分かれる、というのが実情です。具体的な使用状況を契約先へ伝えて、どの物件区分になるかを確認してください。
一般物件になると、商品・保険料・補償の内容や引受の条件が変わることがあります。「一般物件なら保険料が必ず◯倍」といった全国共通の数字はないので、具体的な金額は見積もりで確認してください。
そして、建物の劣化が著しい場合など、引受けそのものを断られることもあります。空き家を扱わない保険会社もあります。一方で、引き受ける会社もあります。「入れない」と決めつける前に、まず確認する——それが最初の一歩です。
親が亡くなったら、この5つを確認する
① 保険証券を探す
まずは現物です。親の家の書類一式、通帳のそばなどを探してください。証券が見つからなくても、口座から保険料が引き落とされていれば、契約先の手がかりになります。
② 契約者・被保険者・満期日を確認する
日本損害保険協会の説明では、契約者は保険会社と契約した当事者で保険料を払う人、被保険者は保険で損害を補償される人です。両者が同じこともあれば、違うこともあります。建物の所有者が誰になっているかとあわせて確認してください。そして満期日。遺産分割が終わっていなくても、満期は来ます。
③ 親が亡くなったこと・空き家になったことを契約先に伝える
ここが一番大事で、一番とばされやすいところです。親が契約者・被保険者だった場合は、相続人から契約先へ連絡し、契約者・被保険者の変更など必要な手続きを確認してください。手続きの内容は、契約内容や保険会社によって異なります。 「親名義のままでも保険金は必ず下りる」とも「死亡と同時に自動的に失効する」とも、断定はできません。
あわせて、建物が空き家になったことも伝えてください。日本損害保険協会は、契約時に正しく答える告知事項(建物の構造・用法など)と、契約後に伝える通知事項(建物の構造・用法の変更など)を分けて説明しています。故意または重大な過失で必要な通知をしなかった場合、契約の解除や保険金が支払われないことにつながる場合があります(通知しなかった事項と事故に因果関係がなければ支払われる場合もある、とされています)。
黙って居住中の契約のまま更新する——これは避けてください。保険料を節約したつもりが、いざというときに使えないことになりかねません。
④ 継続できるか・物件区分・地震保険を確認する
住宅物件のまま継続できるのか、一般物件になるのか。補償内容はどう変わるのか。ここで必ず確認したいのが地震保険です。
地震保険に関する法律では、対象が「居住の用に供する建物又は生活用動産」に限られています。 店舗・事務所専用など住居として使用されない建物は対象外です。
ただし、「空き家」という呼び方だけで対象外になるわけではありません。 財務省の資料では、空き家や別荘であっても「常時、居住のために使用する状態」であれば対象になり得るとされています。判断が分かれるところなので、必ず契約先に確認してください。
そして、地震による倒壊や地震を原因とする火災は、通常の火災保険の基本補償では対象外です。地震そのものの損害に備えるなら地震保険の確認が必要です(商品によっては地震火災費用など限定的な補償が付く場合があります)。
⑤ 第三者への賠償まで補償されるか確認する
火災保険は基本的に、自分の建物や家財の損害に備えるものです。空き家の瓦や外壁が落ちて通行人にケガをさせた、といった第三者への損害賠償は、別の補償を確認する必要があります。
日本損害保険協会によれば、個人賠償責任保険は個人の「住宅の管理」や日常生活に起因する法律上の損害賠償責任を補償するもので、火災保険などの特約として契約されることが多いとされています。ただし、相続した無人の実家がその「住宅」に含まれるかは、商品・約款によります。「個人賠償特約を付けているから空き家の事故も必ず補償される」とは考えず、対象になるかを確認してください。
保険の引受けは、建物の状態や管理されているかどうかにも左右されます。
遠方で通えないなら、空き家の片付けや管理について相談できる窓口もあります。
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保険では埋まらないことも知っておく
もらい火は、原則として相手に賠償を求められません。 失火責任法により、隣家の失火で自宅が焼けても、火元に重大な過失がない限り、損害賠償を請求できないのが原則です(重大な過失がある場合などは別です)。「誰も住んでいないから火は出ない」と考えても、近隣からの延焼に対しては、自分の火災保険で備えておく重要性が高いということです。
一方で、経年劣化や老朽化そのものを保険で直すわけではありません。 空き家は人の出入りがないぶん傷みが進みます。雨漏りや腐食を放置したまま保険だけ掛けても、建物は守れません。
そして、もし瓦や外壁が落ちて他人に損害を与えた場合。民法717条の工作物責任では、まず占有者が責任を負い、占有者が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしていたときは所有者が責任を負います。そして所有者には、占有者にあるような免責の規定がありません。相続によってその建物の所有権を承継した人は、所有者としてこの責任が問題になり得ます。
ただし、台風で瓦が飛べば所有者が無条件に賠償するという意味ではありません。前提として、設置や保存の瑕疵と損害との因果関係が必要です。とはいえ責任は軽くないので、危ない箇所があるなら、保険の前に直す・撤去するのが先です(近隣トラブル全般は相続した空き家の庭木が越境…近隣トラブル3対処、管理が行き届かない場合のリスクは管理不全空き家とは?固定資産税6倍を防ぐ3つの対応)。
相続放棄を検討している場合は、注意してください。 火災保険の解約返戻金などが相続財産に関わる可能性があるため、勝手に契約を変更・解約したり返戻金を受け取ったりしないでください。なお「相続放棄をすれば建物の管理も一切関係なくなる」とは限らず、民法940条では放棄した時にその財産を現に占有している人が、引き渡すまで保存義務を負うことがあります(相続放棄の前に知るべき5つのデメリット)。
税金・法律の具体的な判断は、税理士・司法書士など専門家に確認してください(保険の内容は契約先の保険会社、相続放棄の法的判断や争いは弁護士、申述書類の作成は司法書士にも相談できます)。
まとめ
相続した実家が空き家になったときの火災保険は、「入れない」ではなく「扱いが変わることがある」と考えてください。
①保険証券を探す②契約者・被保険者・満期日を確認する③親が亡くなったこと・空き家になったことを契約先に伝える(黙って居住中のまま更新しない)④継続できるか、一般物件になるか、地震保険は付けられるかを確認する(地震保険は「居住の用に供する建物」が対象)⑤瓦の落下など第三者への賠償まで補償されるかを確認する。
今日できる一歩は、実家の火災保険の満期日を調べることです。満期までの日数が、動ける時間そのものです。そしてもう一つ。保険を掛け続けるかどうかを考えるとき、その実家をいつまで持ち続けるのかも一緒に考えてみてください。固定資産税や管理の負担は所有している間続き、火災保険を継続するならその保険料も必要です。実家全体の進め方は実家じまいの進め方7ステップ、遠方で管理できない場合は遠方の実家を管理できないときにやる5つのこともご覧ください。
よくある質問
空き家は火災保険に入れないのですか?
入れないと決まっているわけではありません。空き家であることだけを理由に全国一律で契約できないとする法令はなく、引き受ける保険会社もあります。ただし、住居としての実態がないと「一般物件」として扱われることがあり、保険料や補償内容、引受けの条件が変わる場合があります。建物の劣化が著しいと断られることもあるため、まず契約先に確認してください。
親名義のままの火災保険を、そのまま続けてもいいですか?
契約先への確認が必要です。親が契約者・被保険者だった場合は、相続人から連絡して、契約者・被保険者の変更など必要な手続きを確認してください(手続きは契約内容や保険会社によって異なります)。あわせて、建物が空き家になったことも伝えてください。契約後の「通知事項」にあたる変更を故意または重大な過失で伝えなかった場合、契約の解除や保険金が支払われないことにつながる場合があります。
空き家でも地震保険は付けられますか?
付けられない場合があります。地震保険に関する法律では対象が「居住の用に供する建物又は生活用動産」に限られているためです。ただし「空き家」という呼び方だけで対象外になるわけではなく、財務省の資料では空き家や別荘でも「常時、居住のために使用する状態」なら対象になり得るとされています。判断は契約先に確認してください。なお地震による倒壊や地震が原因の火災は、通常の火災保険の基本補償では対象外です。
参考にした公式情報
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A すまいの保険について」(住宅物件・一般物件、補償の範囲)
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問59」(火災保険の告知事項・通知事項)
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問52」(もらい火と失火責任法)
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問92」(個人賠償責任保険)
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 契約者と被保険者の違い」
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」(物件種別)
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問50」(火災保険の補償と主な免責=経年劣化等)
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問62」(地震保険)
- 財務省「地震保険制度の概要」
- 財務省「地震保険制度」説明資料(空き家・別荘でも常時居住のために使用する状態なら対象になり得る)
- e-Gov法令検索「地震保険に関する法律」(第2条 定義)
- e-Gov法令検索「民法」(第717条 土地の工作物等の占有者及び所有者の責任・第940条)
- 法務省「相続放棄後の財産の保存義務について」
※保険の取扱いは保険会社・商品・建物の使用状況によって異なります。制度の内容も改正により変わります。最新の情報は上記の公式情報や、契約先の保険会社、弁護士・司法書士など専門家にご確認ください。
