実家のマンションを相続したら?3つの注意点

相続した土地

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「誰も住んでいないのに、管理費と修繕積立金だけが毎月引き落とされていく」——。親が住んでいた分譲マンションを相続した人のQ&Aでも見られる、よくある悩みの一つです。築年数が経っていれば、売れるのかどうかも分かりません。

このサイトでは戸建てや土地の実家じまいを多く扱っていますが、マンションは勝手が違います。 自分の判断だけで壊すこともできず、国に返すこともできず、それでいて毎月の固定費は止まりません。私は土地の取引や所有者の方とのやり取りに関わってきました。法律の専門家ではありませんが、国土交通省・国税庁・法務省などの公開情報をもとに、戸建てとの違いに絞って整理します。

注意点1:誰も住まなくても、毎月の固定費は止まらない

戸建ての空き家でも固定資産税はかかりますが、マンションにはそれに加えて管理費と修繕積立金があります。これらは「住んでいること」ではなく区分所有者であることを基礎に、管理規約などにもとづいて負担するものです。空室だからゼロになるわけではありません。国土交通省の資料でも、持ち家マンションの継続的な費用として固定資産税・都市計画税、管理費、修繕積立金、保険料などが挙げられています。

ここが戸建てとの最初の分かれ道です。戸建てには通常、マンションのような管理費・修繕積立金の定期負担はありません。 マンションでは空室でも、所有している間は管理規約などにもとづく負担が続きます。

親に滞納があったら、相続人はどうなるか

親が管理費を滞納していた場合、相続放棄などをしなければ、相続人は原則としてその債務も引き継ぎます。相続は、権利だけでなく債務も包括的に承継するからです。

なお「区分所有法8条があるから相続人が払う」という説明を見かけますが、同条が定めているのは「特定承継人」への請求(典型は売買や競売でその部屋を取得した人)です。相続人は包括承継人で、根拠は相続のルールのほうにあります。結論が同じでも、根拠が違えば相続放棄したときの扱いが変わります。

相続放棄すれば、管理費を払い続ける義務はない

適法に相続放棄をすれば、はじめから相続人ではなかったことになり、親の滞納管理費も引き継ぎません。 「元相続人だから払い続けなければならない」というのは誤りです(自分が連帯保証人になっているなど、相続とは別の根拠で債務を負っている場合は別です)。

ただし、相続放棄には原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」という期限があります。 また、すでに相続財産を処分していると相続放棄に影響することがあります。「管理費の負担が重いから、後から放棄すればいい」とは考えず、早めに確認してください。

なお民法940条で、放棄した時にその財産を現に占有している人は、引き渡すまで保存義務を負うことがあります。ただしこれは「保存」の義務であって、管理費を自腹で払い続ける義務と同じものではありません。どこからが「現に占有」にあたるかは個別判断なので、迷うときは弁護士に確認してください(相続放棄の前に知るべき5つのデメリット)。

注意点2:税金の扱いが、戸建てと違う

ここが一番見落とされます。3つに分けます。

①「相続空き家の3,000万円控除」は、分譲マンションでは原則使えない

相続した実家を売るときの定番、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除。この特例には、対象となる家屋の要件として「区分所有建物登記がされている建物でないこと」が含まれています。一般的な分譲マンションの一室は区分所有建物として登記されているため、原則としてこの特例は使えません。

ほかにも「1981年5月31日以前に建築されたこと」「相続の直前に被相続人以外が居住していなかったこと」などの要件があり、相続人が3人以上の場合は控除額の上限が2,000万円になります(相続した空き家の3000万円控除を使う5つの条件)。

ただし「マンションだから3,000万円控除は一切使えない」と覚えないでください。 3,000万円控除には別に、自分が住んでいたマイホームを売ったときの特例があります。相続後にそのマンションを実際に生活の本拠として使っていたなど、この特例の要件を満たす場合は対象になり得ます。ただし、特例を受けることだけを目的とした一時的な入居は対象外とされています。名前が似ているだけの別制度なので、使えるかどうかは税理士に確認してください。

② 小規模宅地等の特例は、マンションでも使える場合がある

逆に、こちらは使えることがあります。被相続人などの居住用だった宅地等について、要件を満たせば330㎡まで80%減額する特例です。国税庁も、区分所有補正をした後の敷地利用権の価額をもとにこの特例を適用することを示しています。「マンションだから敷地の特例とは無関係」ではありません。

③ 2024年から、マンションの相続税評価に補正が入る

2024年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から、居住用の区分所有財産については、従来の方法で計算した価額に区分所有補正率を乗じて評価する取扱いになりました。市場価格と相続税評価額の差が大きいマンションがあったためです。

注意したいのは、すべてのマンションの評価額が上がるわけではないことです。乖離が大きい住戸で引き上がるケースがある、という性質のもので、総階数2以下の一定の低層集合住宅などは対象外です。評価が変わると相続税だけでなく小規模宅地等の特例の計算にも影響するため、相続税がかかりそうな規模なら、早めに税理士に確認してください(実家を相続したら相続税はかかる?3つの目安)。

分譲マンションは、空き家特例が使えない一方で小規模宅地等の特例や2024年の評価補正など、
マンション特有の判定が加わります。相続に対応できる税理士を無料で紹介してもらい、売る前に試算しておくと安心です。

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注意点3:出口が狭く、そのうえ「放置」もしづらくなった

戸建てなら、売れなければ解体して更地にする、国庫帰属制度を検討する、といった出口があります。マンションにはそれがありません。

  • 自分だけでは取り壊せない……一棟の建物を、一室の区分所有者の判断で取り壊すことはできません
  • 相続土地国庫帰属制度は、一室の処分方法としては使えない……この制度の対象は相続等で取得した土地の所有権・共有持分で、建物が存在する土地は申請できず、共有の場合は共有者全員での申請が必要です。区分所有権と敷地利用権は通常切り離して処分できないため、自分の部屋に付いた敷地権だけを国に返して抜ける、ということはできません(相続土地国庫帰属制度で土地を手放す3条件)
  • 管理組合に無料で引き取ってもらえる制度はない……2026年の改正で、管理組合法人が建物の管理上必要な場合に所定の決議を経て区分所有権を取得できる仕組みは明文化されましたが、所有者の側から引取りを求められる制度ではありません

結果として、個人の相続人が自分で選べる主な出口は、売る・貸す・持ち続けるの3つになります。

2026年4月の区分所有法改正で、何が変わったか

2026年4月1日から、区分所有法の改正が施行されています(一部、管理計画認定制度の新築時申請などは2027年4月1日施行です)。相続人の立場から押さえておきたいのは次の点です。

  • 所有者・所在が分からない住戸についての「所有者不明専有部分管理制度」と、適切に管理されていない専有部分などについての管理制度が新設されました。利害関係人が裁判所に申し立てて管理人を選任してもらう仕組みです
  • 所在が分からない区分所有者を、決議の母数から除外できるようになりました。ただし自動ではなく、裁判所の手続きが必要です
  • 決議の要件が緩和されました。建替えは原則5分の4のままですが、耐震性不足など一定の客観的な事情があるマンションでは4分の3に緩和されます

つまり、相続人や所在が分からない住戸があっても、管理組合側が一定の手続きを経て管理や意思決定を進めやすくなりました。 築古マンションでは、建替えや売却といった話が以前より動きやすくなる場面があります。

これとは別に、相続登記の申請義務(取得を知った日から原則3年以内)が2024年4月から始まっており、マンションにも当然に適用されます。一般的な分譲マンションは敷地権付き区分建物ですが、古いマンションでは敷地権化されておらず土地の持分が別登記のこともあるため、登記事項証明書で「敷地権の表示」を確認してください(相続登記しないとどうなる?放置5つのリスク)。

売るかどうかを判断するなら、築年数だけでなく管理の状態を見てください。新耐震基準かどうかは、築年月ではなく1981年6月1日以降に建築確認を受けたかで判断します。あわせて、長期修繕計画の有無、修繕積立金の積立状況、総会が機能しているかを、総会議事録や管理規約で確認します。法律にもとづく自治体のマンション管理計画認定制度や、業界団体による民間のマンション管理適正評価制度(★0〜5の6段階・有効期間1年)も、管理状態を確認する手がかりになります(認定や高評価が高く売れることを保証するものではありません)。

税金・法律の具体的な判断は、税理士・司法書士など専門家に確認してください(相続税は税理士、登記は司法書士、相続放棄や管理組合との争いは弁護士が相談先です)。

まとめ

実家が分譲マンションだった場合、戸建ての実家じまいとは3点が決定的に違います。

①空室でも管理費・修繕積立金が続く(親に法的に残っている滞納債務も、相続放棄などをしなければ原則として承継します。放棄には原則3か月の期限があります)。②税金の扱いが違う(相続空き家の3,000万円控除は区分所有建物では原則使えない/小規模宅地等の特例は使える場合がある/2024年から評価に補正が入る)。③出口が狭い(自分だけでは壊せず、国庫帰属も使えず、管理組合に返すこともできない)。くわえて2026年4月の改正で、管理組合側が管理や意思決定を進めやすくなっています。

今日できる一歩は、管理費・修繕積立金が毎月いくら引き落とされているかを通帳で確認し、管理組合から届く総会議事録と長期修繕計画に目を通すことです。毎月の固定費が分かって初めて、「いくらで売れるなら手放すべきか」の判断ができます。実家全体の進め方は実家じまいの進め方7ステップもご覧ください。

よくある質問

親が滞納していた管理費は、相続人が払わないといけませんか?

相続放棄などをしなければ、原則として承継します。相続では権利だけでなく債務も包括的に引き継ぐためです(「区分所有法8条で相続人が払う」という説明を見かけますが、同条は売買などで取得した特定承継人への請求を定めたもので、根拠が異なります)。

マンションだと3,000万円控除は使えないのですか?

使えないのは「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除」のほうで、区分所有建物登記がされている建物を対象外としているためです。自分が住んでいたマイホームを売ったときの3,000万円控除は別制度で、要件を満たせば使える可能性があります(特例目的の一時的な入居は対象外です)。

誰も住まないマンションを、管理組合や国に引き取ってもらえませんか?

一室だけを管理組合に引き取らせる制度や、敷地権だけを国に返す制度はありません。相続土地国庫帰属制度は建物が存在する土地を申請できず、区分所有権と敷地利用権も通常切り離せないためです。個人の相続人が自分で選べる主な出口は、売る・貸す・持ち続けるの3つです。

参考にした公式情報

※制度の要件や取扱いは改正や個別の事情により変わります。最新の情報は上記の公式情報や、税理士・司法書士・弁護士など専門家にご確認ください。

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