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「相続したけれど、使う予定も売れる見込みもない土地。いっそ国に引き取ってもらえないか」。そう思ったことはないでしょうか。2023年に始まった「相続土地国庫帰属制度」は、まさにそのための制度です。ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではなく、条件や費用があり、「思っていたのと違った」となりやすい制度でもあります。
私はかつて土地の取引に関わる仕事をする中で、遠方の土地や残置物がある土地について、所有者の事情を踏まえて進め方を考える場面がありました。専門家ではありませんが、その経験から言えるのは、この制度は「最後の選択肢」として知っておく価値はあるものの、まず売れないかを確かめるほうが、結果的に負担を抑えられる場合もある、ということです。この記事では、制度の中身と、手放すための大きな3つの条件、そして使えないケースを順に整理します。
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度は、相続または相続人への遺贈によって取得した土地を、国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月27日にスタートしました。
ポイントは2つあります。1つは、対象が「相続などで取得した土地」に限られること。自分で買った土地は対象外です(ただし共有地の場合は、共有者の取得経緯によって扱いが変わることがあるため、法務局で確認してください)。もう1つは、引き取ってもらうには審査があり、認められた場合は「負担金」というお金を納める必要があること。つまり「タダで、どんな土地でも返せる」制度ではありません。
それでも、売ろうにも買い手がつかない土地、管理だけが負担になっている土地にとっては、固定資産税や管理の手間から解放される道になりえます。次の章で、手放すための条件を見ていきましょう。
手放すための大きな3つの条件
細かい要件はいくつもありますが、つまずきやすい大きな条件は、次の3つです。
1つ目は、建物がない(更地である)ことです。
建物が建っている土地は、そのままでは対象になりません。古い家が残っている場合は、解体して更地にする必要があります。解体には費用がかかるため、「国庫帰属のために解体したら、かえって出費がかさんだ」とならないよう、解体費用も含めて検討することが大切です。解体費用は空き家の解体費用はいくら?補助金と3つの注意点で整理しています。
建物がある土地は、そのままでは国庫帰属の対象になりません。更地にするため解体が必要になる場合もありますが、費用は業者や条件によって差が出ます。まずは複数社の見積もりを比べると、費用感をつかみやすくなります。
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2つ目は、境界がはっきりしていて、争いがないことです。
土地の境界が明らかでなかったり、隣地との間で揉めごとがあったりすると、引き取りの対象になりません。境界があいまいな土地では、申請の前に測量や境界の確認が必要になることもあります。
3つ目は、負担金を納められることです。
引き取りが認められた場合、土地を管理するための費用として「負担金」を納めます。金額は土地の種類や面積によって変わり、原則として20万円が一つの目安とされていますが、宅地・農地・森林などの区分や面積によっては、これより高くなることもあります。あわせて、申請のときには、土地1筆あたり14,000円の審査手数料もかかります。負担金の正確な金額は、必ず法務局で確認してください。
このほかにも、担保権が設定されている土地、他人が通行などに使っている土地、管理に過大な費用や労力がかかる崖地などは、対象から外れる場合があります。「3つだけ満たせば必ず通る」というものではなく、あくまで入口の条件と考えてください。
「国庫帰属が使える」とよくある誤解
期待が大きいぶん、思い違いも起きやすい制度です。代表的な誤解を3つ解いておきます。
- 「どんないらない土地でも引き取ってもらえる」……対象は相続などで取得した土地に限られ、建物の有無や境界、管理の状態などの条件があります。実際に認められるかは土地ごとに変わります。
- 「無料で返せる」……審査手数料に加え、認められた場合は負担金がかかります。建物があれば解体費も必要です。トータルでまとまった費用になることもあります。
- 「申請すればすぐ手放せる」……書類の準備や審査に時間がかかります。境界確認や解体が必要なら、その分さらに期間がかかります。早めに動き始めるのが安心です。
申請のおおまかな流れ
実際に進めるときは、次のような流れになります。
- 法務局に事前相談する……要件を満たしそうか、どんな書類が必要かを、申請の前に相談できます。まずはここから始めると、無駄足を防げます。
- 土地を整える……建物があれば解体して更地にし、境界が不明なら確認しておきます。
- 申請書類を提出する……申請書と添付書類を法務局へ提出し、審査手数料を納めます。
- 審査を受ける……書面審査に加え、実地調査が行われることもあります。承認されたら負担金を納め、土地が国に帰属します。
審査期間は土地の状況や法務局の確認内容によって変わります。数か月以上かかることもあり、解体や境界確認が必要な場合はさらに時間がかかるため、思い立ったら早めに法務局へ相談するのがおすすめです。
申請の前に確認したいこと
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国庫帰属を考える前に、確認しておきたいことがあります。
- まず「売れないか」を確かめる……買い手がつくなら、売却のほうが手元にお金が残ります。解体費や負担金を払って国に返すより得になる場合もあるので、先に価値を調べておきましょう。国の不動産情報ライブラリでは、近隣の似た土地の成約価格を調べられます。手放し方全体は相続した土地がいらない時の3つの手放し方、売れにくい場合は実家が売れない3つの理由と今すぐできる対策も参考になります。
- 名義を整えておく……相続登記が済んでいない場合でも、相続関係を証明する書類があれば申請できますが、書類の準備で手続きは複雑になりやすいです。2024年4月から相続登記は義務化されているので、いずれにせよ早めに名義の状態を確認しておきましょう。
- 相続人全員で方針を共有する……土地が共有になっている場合、申請は共有者全員での共同申請が原則です。早めに話し合っておきましょう。
なお、税金・法律・登記・境界の具体的な判断や、制度の要件の詳細は、税理士・司法書士・土地家屋調査士など専門家、および法務局に確認してください。本記事は一般的な情報の整理です。制度の内容や負担金の額は改正される場合があります。
よくある質問
Q1. 相続土地国庫帰属制度を使うと、いくらくらいかかりますか?
審査手数料に加え、引き取りが認められた場合は負担金がかかります。負担金は原則として20万円が一つの目安とされていますが、土地の種類や面積によって変わります。さらに、建物があれば解体費用、境界が不明なら測量費用が別途必要になることもあります。総額は土地ごとに大きく異なるため、まずは法務局で要件と費用の見込みを確認するのがおすすめです。
Q2. 建物が建ったままでも申請できますか?
いいえ、建物がある土地はそのままでは対象になりません。解体して更地にすることが前提です。ただし、解体費をかける前に、古家付き土地として売れないか、買取で引き取ってもらえないかを確認しておくと、解体費そのものを省ける場合があります。
Q3. 農地や山林でも引き取ってもらえますか?
農地や森林も対象になりえますが、土地の状態によっては対象外となる条件(管理に過大な費用がかかる、境界が不明など)に当てはまることがあります。負担金の計算も区分によって変わります。使えるかどうかは個別の判断になるため、法務局や専門家に相談することをおすすめします。
参考にした公式情報
- 法務省「相続土地国庫帰属制度について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html
- 法務省「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」 https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

