相続した実家の固定資産税は誰が払う?3つの整理

相続した土地

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きょうだいで実家の分け方が決まらないまま、固定資産税の納税通知書が自分宛に届いた。「代表者になっただけなのに、自分が全部払うことになるのか」「もう何年も自分だけが払っている。それなのに実家が自分のものになるわけでもない」——。

結論から言うと、納税通知書が自分に届いた=自分だけの税金、ではありません。 そして意外に知られていないのですが、「親が亡くなった年の分」と「その次の年の分」では、法律上の根拠がまったく違います。私は土地の取引や所有者の方とのやり取りに関わってきました。法律の専門家ではありませんが、地方税法・民法の条文と自治体の公開情報をもとに整理します。

整理1:「親が亡くなった年」と「次の年」で、ルールが変わる

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課税されます(賦課期日)。ここを起点に考えると、2つのケースに分かれます。

ケースA:1月1日の賦課期日時点では、まだ親が所有者だった年度分

この年度の固定資産税は親に課された税です。死亡によって消えるわけではなく、相続人がその納税義務を承継します。

このとき、相続人が複数いれば、各相続人は相続分によって按分した額を納付するのが原則です(地方税法9条2項)。「全員が連帯して全額」ではありません。ただし、相続した財産の価額が自分に按分された税額を超えている相続人は、その超える額を限度として、他の相続人の税額についても責任を負うことがあります(同条3項)。「自分の相続分だけ払えば何があっても終わり」とも言い切れない、ということです。

ケースB:親の死亡後、遺産分割が終わらないまま次の1月1日を迎えた年度分

登記の名義が親のままでも、現に所有している人(現所有者)が納税義務者になります(地方税法343条2項)。遺言などで取得者が決まっていない一般的なケースでは、遺産分割が終わるまで実家は相続人の共有です(遺言で取得者が決まっている場合や、相続放棄をした人は現所有者から外れます)。

そして共有物に対する税については、共有者が連帯して納付義務を負います(同法10条の2)。市区町村との関係では、持分に関係なく、各相続人に全額を請求できるという扱いです。自治体が持分ごとに分割して課税しなければならない、という決まりはありません。

親が所有者だった年度分次の年度以降(分割未了)
1月1日の所有者親本人現所有者(通常は相続人の共有)
根拠地方税法9条地方税法343条2項+10条の2
市区町村との関係原則、相続分で按分全員が全額について連帯

たとえば父が2026年6月に亡くなった場合。2026年度分は1月1日時点の所有者が父なので9条の話、2027年度分は343条2項で相続人が現所有者になり、共有なら10条の2の連帯納付義務、という形になります。

つまり「代表者だから全部払う」のではなく、「いつの年度の税なのか」で法律関係が変わります。 分割が長引くほど、ケースBの年が積み上がっていきます(話し合いが止まっているなら遺産分割調停の進め方5ステップと費用の目安もご覧ください)。

整理2:「相続人代表者」は、払う人ではなく書類の受取人

納税通知書が自分だけに届くと、「自分が指名された」と感じます。けれども相続人代表者指定届は、相続人が複数いる場合に、地方税の賦課徴収や還付に関する書類を受け取る代表者を決めるための届出です(地方税法9条の2)。自治体も「納税通知書等を受領する代表者」と説明しています。

代表者になったこと自体を理由に、その人だけが最終的に全額を負担するわけではありません。 もし全額を請求され得るとすれば、それは「代表者だから」ではなく、共有者として連帯納付義務があるから(先ほどのケースB)です。理由が違えば、他のきょうだいへの清算の話し方も変わります。

なお、届出をしないまま相当期間が過ぎると、自治体の側が相続人の一人を代表者として指定できるとされています。届けなければ通知が来なくなる、ということはありません。

ひとつ補足を。9条の2の「相続人代表者」は、親に課された税(ケースA)についての書類の受取人です。翌年度以降の共有分(ケースB)については、自治体が現所有者の代表者を通知先として扱う場合があり、厳密には立場が異なります。実際には同じ届出書で両方を兼ねている自治体もあるため、窓口で確認してください。

2020年度改正で設けられた「現所有者の申告」も忘れずに

もう一つ、見落とされやすい制度があります。2020年度の地方税法改正で、登記名義人が亡くなった不動産について、現に所有している人(相続人等)が市区町村に申告する仕組みが設けられました(地方税法384条の3)。

これは市区町村が条例で定める制度です。たとえば横浜市などでは「現所有者であることを知った日の翌日から3か月以内」としています。条例により、正当な理由なく申告しない場合に10万円以下の過料が定められることもあります。期限・過料の扱い・いつから始まったかは自治体によって差があるため、実家の所在地の市区町村で確認してください。

そして重要なのは、これは相続登記とはまったく別の制度だということです。現所有者の申告は固定資産税の課税のために市区町村へ行うもので、申告しても登記名義は変わりません。相続登記は法務局への手続きで、2024年4月から原則「取得を知った日から3年以内」の申請義務があります(相続登記しないとどうなる?放置5つのリスク)。

分割が決まらないまま年数が経つと、立替えの精算も登記も複雑になります。
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整理3:立て替えた分は、どう清算するか

「自分だけが払ってきた」という場合、清算の余地はあります。

相続開始後、共有状態の実家に課された固定資産税については、共有者は内部的に持分に応じて管理費用その他共有物の負担を負うとされています(民法253条)。市区町村には全額払う義務があっても、きょうだいの間では持分に応じて分け合うのが原則、ということです。

ただし、「必ず法定相続分どおりに請求できる」と断定はできません。相続分、遺言の有無、相続放棄、誰が実家を使っていたかなど、事情によって変わります。

もう一つ知っておきたいのが、この清算は「遺産分割そのもの」とは少し違うという点です。親が残した債務や、相続開始後に発生した費用は、本来の遺産分割の対象とは別に扱われます。家庭裁判所の調停では、当事者全員が合意すればこうした付随する問題もあわせて話し合えますが、審判では原則として扱えないとされています。

そして誤解しやすいのが遺産分割の遡及効です。民法909条で分割の効力は相続開始時にさかのぼりますが、第三者の権利を害することはできないとされています。固定資産税は1月1日時点で納税義務者が確定し、年の途中で所有者が変わってもその年度の納税義務者は変わりません。少なくとも市区町村との関係では、後日の遺産分割によって、すでに成立したその年度の納税義務者が自動的に入れ替わるわけではありません。

だからこそ実務上は、遺産分割協議書に清算の条項を書いておくことに意味があります。「相続開始後に○○が立て替えた固定資産税○円を、どう精算するか」を明記しておけば、後から言った・言わないになりません。領収書や納付書は捨てずに残しておいてください。最終的に実家を取得する人が過去の立替分も負担する、という合意も可能ですが、口約束ではなく書面に。

なお、被相続人に課されるべきその年度の固定資産税は、被相続人の債務として相続税の債務控除の対象になり得ます(死亡時点で納税通知書がまだ届いていなくても対象になり得ます)。一方、親の死亡後に相続人の共有不動産へ新しく課された分は、親の債務ではないので扱いが違います。税金・法律の具体的な判断は、税理士・司法書士など専門家に確認してください(相続税は税理士、登記は司法書士、きょうだい間の争いは弁護士が相談先です)。

払わずに放置すれば、延滞金が発生し、督促を経て差押えに進むこともあります。実家を空き家のまま放置して管理不全空家などとして市区町村から勧告を受けると、土地の住宅用地特例から外れる可能性もあります(「空き家になった瞬間に6倍」という説明は不正確です。管理不全空き家とは?固定資産税6倍を防ぐ3つの対応)。

まとめ

相続した実家の固定資産税は、3つに整理すると見通しが立ちます。

①年度で法律が違う……1月1日時点で親が所有者だった年度分は親の税を承継(地方税法9条・原則は相続分で按分)。次の年度以降は現所有者が納税義務者となり(343条2項)、共有なら市区町村に対して全員が全額について連帯して義務を負います(10条の2)。②代表者は書類の受取人……指定されたから全額負担、ではありません。あわせて、相続登記とは別に現所有者の申告(多くの自治体で3か月以内・条例により過料)も確認を。③立替分は清算できる余地がある……きょうだい間では持分に応じた負担が原則。ただし遡って自動精算されるわけではないので、協議書に清算条項を。

今日できる一歩は、手元の納税通知書で「どの年度の分か」を確認し、立て替えた分の納付書・領収書をまとめておくことです。そのうえで、分割の話し合いを再開してください。年度をまたぐほど、整理すべき金額が増えていきます。きょうだいでの分け方は実家を兄弟で相続したときの分け方4つと注意点、実家全体の進め方は実家じまいの進め方7ステップもご覧ください。

よくある質問

相続人代表者になったら、固定資産税を全額払う義務がありますか?

代表者指定届は、納税通知書などの書類を受け取る代表者を決めるものです(地方税法9条の2)。代表者になったこと自体を理由に全額を最終負担するわけではありません。ただし、遺産分割が終わらないまま迎えた年度の税は、共有者として全員が全額について連帯納付義務を負うため(同法10条の2)、市区町村から全額を請求されることはあり得ます。

何年も自分だけ払っています。きょうだいに請求できますか?

清算できる余地はあります。共有者は内部的に持分に応じて共有物の負担を負うとされているためです(民法253条)。ただし相続分や遺言の有無、誰が使っていたかなどで変わるため、「必ず法定相続分どおり」とは限りません。納付書・領収書を残し、遺産分割協議書に清算条項を入れておくのが確実です。

固定資産税を払い続ければ、その実家は自分のものになりますか?

なりません。納税は所有権の取得とは別の話です。誰が実家を取得するかは遺産分割で決まります。むしろ、払い続けているのに分割の話が進まない状態が長引くほど、立て替えた金額が膨らみます。清算のためにも、早めに話し合いの場を持つか、まとまらなければ家庭裁判所の調停を検討してください。

参考にした公式情報

※制度の要件や運用は改正や自治体によって変わります。最新の情報は上記の公式情報や、所在地の市区町村、税理士・司法書士・弁護士など専門家にご確認ください。

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