相続した農地を手放す4つの方法と注意点

相続した土地

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親から田んぼや畑を相続したものの、自分は農業をしないし、遠方に住んでいて管理もできない。売ろうとしても「農地は普通の土地のようには売れない」と言われ、出口が見えず困っている——。そんな方は少なくありません。

農地は、農地法という法律で売買・貸借・転用が制限されていて、宅地のように不動産会社へ出して終わり、とはいきません。まず知ってほしいのは、農地以外の財産も含めて相続したくないなら、相続放棄の期限(原則3か月)を先に確認すること。そのうえで、農地を相続して手放したいなら、最初の相談先は地元の農業委員会・農地バンクになる、ということです。私は土地の取引や所有者の方とのやり取りに関わってきました。法律の専門家ではありませんが、農林水産省・法務省の情報をもとに、農地を手放す4つの方法と注意点を整理します(相続直後の手続きは農地を相続したらまず行う3つの手続き、実家全体の進め方は実家じまいの進め方7ステップもご覧ください)。

農地は「普通の土地のように」売れない

農地を農地のまま売ったり貸したりするには、原則として農地法3条にもとづく農業委員会の許可が必要で、無許可の売買は無効です。しかも買えるのは、農地法3条の許可要件(農地を効率的に利用すること、必要な農作業に従事することなど)を満たして実際に耕作できる個人や、一定の要件を満たす法人などに限られ、宅地に比べて買い手がかなり限定されます(かつての「下限面積要件」は2023年に廃止されました)。

このほか、農地バンク(農地中間管理機構)が作る計画を通じて貸したり売ったりするルートもあります。いずれにせよ、手放したいときの最初の一歩は、農地のある市町村の農業委員会や農地バンクに相談することです。

なお、相続した農地は、相続登記(相続で取得したことを知った日から原則3年以内)とは別に、農業委員会への届出(相続の発生からおおむね10か月以内。怠ると10万円以下の過料)も必要です(詳しくは農地を相続したらまず行う3つの手続き)。

農地を手放す4つの方法

方法1:農地のまま売る・貸す(農業委員会・農地バンク)

農家や新規就農者などに、農地のまま売る・貸す方法です。農業委員会の許可を得て売買・貸借する方法のほか、農地バンクを通じて貸し付け・売却する方法があります。農用地区域内の農地を一定の計画で譲渡した場合は800万円、農地バンクとの買入協議による譲渡では1,500万円の譲渡所得の特別控除を、一定の要件を満たす場合に使えることがあります(農地バンクに売れば自動的に控除、ではありません。税理士や農地バンクに確認を)。

ただし、農地バンクに預ければ必ず借り手・買い手がつくわけではありません。営農条件が悪い農地や、地域の計画から外れた農地は、農地バンクが引き受けられないこともあります。

方法2:宅地などに転用して売る(農地法4条・5条)

農地を宅地や駐車場などに転用して、活用・売却する方法です。自分で転用するのが農地法4条、売買・賃貸など権利の移転を伴う転用が5条で、原則として都道府県知事等の許可が必要です(市街化区域内では農業委員会への届出)。

ただし、農業振興地域の「農用地区域(いわゆる青地)」の農地は、原則として転用できません。転用するにはまず農用地区域からの除外が認められる必要があり、要件は厳しいものです。また、市街化調整区域では、農地の転用許可とは別に、都市計画法上の開発・建築の制限も確認が必要です。「転用して宅地で売ればいい」と簡単にはいかない、と考えておきましょう。

方法3:相続開始後、早い段階で相続放棄する(原則3か月)

そもそも相続しない、という選択です。相続放棄は親の生前にはできず、相続が始まった後(親が亡くなった後)に、自分が相続人になったことを知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。農地だけを選んで放棄することはできず、預金や家などを含めた相続財産の全体を手放すことになります(相続財産を処分すると、単純承認とみなされ放棄できなくなることがあるため、迷っている間は財産を動かさないよう注意してください)。なお、相続放棄をしても、放棄した時にその農地を現に占有していなければ、原則として民法940条の保存義務は負わないとされています(現に占有していた場合は、次の相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務が残ることがあります)。詳しくは相続放棄の前に知るべき5つのデメリットを。

方法4:相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう(相続後)

相続した農地を、国に引き取ってもらう制度です。農地も対象になり得ますが、建物がある・担保権や他人の利用権がある・土壌汚染・境界が不明または争いがあるなどの土地は対象外です(農地バンクの権利が設定されている・土地改良区の賦課金がある農地も、事前の確認が必要です)。審査手数料は1筆14,000円。負担金は田・畑で原則20万円ですが、農用地区域内や、市街化区域・用途地域にある一定の農地は面積に応じて算定され、数十万円〜100万円を超える場合もあります(法務省の例では500㎡で約72万円)。制度の詳細は相続土地国庫帰属制度で土地を手放す3条件を。

見落としやすい注意点

  • 売れやすさ:農地は買い手が限られるため、立地や営農条件によっては売却に時間がかかったり、希望価格で売れないことがあります。
  • 土地改良区の賦課金:農地には、固定資産税のほかに、水路など共同利用施設の賦課金がかかる場合があります。農業をしていなくても負担が残ることがあるので、確認しておきましょう。
  • 迷ったら公的窓口へ:農地の処分は選択肢ごとに要件が細かく、地域差もあります。まず地元の農業委員会・農地バンクに相談しましょう。相談先の目安は、農地法上の許可・届出は農業委員会や行政書士、相続登記は司法書士、税金は税理士です。税金・法律の具体的な判断は、税理士・司法書士など専門家に確認してください。

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まとめ

農業をしない相続人が農地を手放すには、①農地のまま売る・貸す(農業委員会・農地バンク)②転用して売る(ただし青地は原則不可)③相続開始直後で、農地以外の財産も含めて相続したくないなら相続放棄④相続したうえで出口がなければ国庫帰属——という順で検討するのが現実的です。相続放棄を考えるなら、まず3か月の期限を確認すること。農地を相続して手放すなら、普通の土地のように不動産会社へ出して終わりではなく、まず農業委員会・農地バンクに相談することです。

農地バンクは万能ではなく、青地(農用地区域)の転用は難しく、国庫帰属も農用地区域なら20万円では済まないことがあります。焦らず、地元の窓口と専門家に相談しながら進めましょう。今日できる一歩は、農地の所在地(市町村)と地番、農用地区域に入っているかどうかを確認し、農業委員会に問い合わせてみることです。

よくある質問

農地は農家にしか売れませんか?

農地のまま売る場合、買えるのは農地法3条の許可要件(農地を効率的に利用すること、必要な農作業に従事することなど)を満たして実際に耕作できる個人や、一定の要件を満たす法人などに限られます(かつての下限面積要件は2023年に廃止されました)。宅地に比べると買い手はかなり限定されます。自分で買い手を探すほか、農地バンク(農地中間管理機構)を通じて貸付・売却を相談する方法もあります。

農地だけを相続放棄できますか?

できません。相続放棄は、農地だけでなく預金・家・借金などを含めた相続財産の全体を手放す手続きです。「田んぼだけいらないから放棄」はできないため、農地だけを手放したい場合は、いったん相続したうえで、売却・貸付・国庫帰属などを検討することになります。

国庫帰属なら、農地はいくらで引き取ってもらえますか?

審査手数料が1筆14,000円かかり、承認されると負担金を納めます。田・畑は原則20万円ですが、農用地区域内や市街化区域内の農地は面積に応じて算定され、数十万円〜100万円を超えることもあります。また、建物がある・境界が不明などの農地は対象外です。金額や可否は土地ごとに変わるので、法務局へ事前に相談しましょう。

参考にした公式情報

※制度の要件や負担金・税額は改正や個別の事情により変わります。最新の情報は上記の公式情報や、農業委員会・農地バンク・税理士・司法書士など専門家にご確認ください。

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