相続した不動産の評価額を調べる3つの方法

相続した土地

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「弟は路線価で計算しようと言う。でも固定資産税の通知に書いてある金額とは全然違う」「固定資産税の評価額で3等分すれば公平だと思っていたけれど、本当にそれでいいのだろうか」——。実家や土地を相続すると、まずぶつかるのが「で、この家はいくらなの?」という壁です。

調べるほど違う金額が出てきて、混乱する方は多いです。でも、どれかが間違っているわけではありません。実家の価格は1つではなく、目的によって使う数字が変わるだけです。私は土地の取引や所有者の方とのやり取りに関わってきました。法律の専門家ではありませんが、国税庁・国土交通省などの公開情報をもとに、3つの評価額の調べ方と使い分けを整理します。

実家の「評価額」は1つではない

相続で出てくる不動産の価格は、主に次の3つです。同じ実家でも、金額は違って当たり前です。

  • 固定資産税評価額……固定資産税の計算の基礎や、相続登記の登録免許税などに使われる、市区町村が決めた公的な価格
  • 相続税評価額……相続税を計算するための価格。土地は路線価などから求める
  • 実勢価格……実際の市場で成立する価格の目安。行政が決めた1つの数字があるわけではなく、過去の成約事例や査定から見当をつける

金額に差が出るのは、そもそも目的が違うからです。宅地の固定資産税評価額は、地価公示価格等の7割程度を目途に評価されるとされていますが、これは「実際に売れる価格の70%」という意味ではありません(公的な価格どうしの水準の話で、農地・山林や建物まで一律7割でもありません)。相続税の土地の評価に使う路線価も地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途とされていますが、そこから土地の形や奥行き、貸している土地かどうかなどで補正が入るため、「売れそうな金額×80%」と電卓で出せるものではありません。

「固定資産税評価額2,000万円、路線価で計算して2,300万円、不動産会社の査定は3,000万円」——これは矛盾ではなく、3つとも役割の違う数字だと考えてください。

3つの評価額の調べ方

1. 固定資産税評価額:手元の書類で確認できる

一番手軽です。毎年春に届く固定資産税・都市計画税の納税通知書に付いている「課税明細書」に記載されています。手元になければ、市区町村(東京23区は都税事務所)で固定資産評価証明書を取得できます。相続人であれば請求できますが、必要な戸籍などの書類や手数料は自治体によって違うので、窓口に確認してください。

あわせて覚えておくと便利なのが名寄帳です。その市区町村内で親名義の土地・家屋を洗い出す手掛かりになります(自治体によって名称や記載内容が異なり、証明としての効力がない場合もあります)。

評価額は原則として3年ごとに評価替えが行われ、直近の基準年度は2024年度(令和6年度)、次は2027年度です。ただし新築や増改築、土地の分筆・合筆があった場合や、地価の下落に応じた修正が行われる場合もあるため、必ず3年間まったく同じ額とは限りません。

2. 相続税評価額:土地は路線価か倍率で計算する

相続税を申告するときに使う価格で、土地は2つの方式があります。

路線価方式は、市街地など路線価が定められている地域で使います。国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べられ、毎年1月1日を評価時点として7月ごろ公表されます。つまずきやすいのが単位で、路線価図の「300D」は1㎡あたり30万円(千円単位)の意味。300万円ではありません(Dは借地権割合の記号)。

倍率方式は、路線価が定められていない地域で使い、固定資産税評価額×国税庁が定める倍率で計算します。課税明細書の金額が出発点です。

建物はもっと単純で、自用の通常の家屋(自分たちで使っていた実家)であれば、原則として固定資産税評価額と同じ額です。ただし建築中の家屋、人に貸している家、一定の分譲マンションなどは別の計算になります。

実際の申告では、土地の形や接道状況による補正、小規模宅地等の特例などが関わってきます。小規模宅地等の特例は、あくまで相続税の課税価格に算入する価額を減額する制度で、実際に売れる価格や査定額が下がるわけではありません。相続税がかかりそうな規模なら、早めに税理士に相談してください(実家に相続税がかかるかどうかの目安は実家を相続したら相続税はかかる?3つの目安をご覧ください)。

3. 実勢価格:公的サイトの事例+不動産会社の査定

「結局いくらで売れるのか」に一番近い価格です。まず、公的なサイトで近隣の取引事例を見られます。

以前は「土地総合情報システム」が使われていましたが、2024年4月から国土交通省の「不動産情報ライブラリ」に移行しています。ここでは実際の不動産取引価格、成約価格情報、地価公示、地価調査などをまとめて確認できます。成約価格は「REINS Market Information」でも検索できますが、まずは不動産情報ライブラリを見れば十分です。

ただし、これらで分かるのはあくまで「近くで似た物件がいくらで売れたか」です。実家そのものの価格は、接道・土地の形・建物の状態・市況で変わります。売却や代償金を具体的に考える段階なら、最後は不動産会社の査定を取るのが現実的です。査定額は「売れると見込まれる価格の提案」で、その金額で必ず売れる保証ではないため、複数社で比べることをおすすめします。

なお、不動産会社の無料査定と、不動産鑑定士による「鑑定評価」は別のものです。査定は売却を前提にした価格の提案で、多くは無料。鑑定評価は国家資格者が不動産の経済価値を判定して価額で示す専門業務で、原則有料です(費用は物件や目的によって変わり、一律の相場はありません)。売るかどうかの判断なら査定で足りることが多く、きょうだいで評価額がまとまらず客観的な根拠が必要な段階になったら鑑定を検討する——という順番で考えてください。

仲介で売り出す場合の価格とは別に、早く手放す場合の買取価格も確認しておきたいときは、
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※買取価格は一般に市場で売り出した場合より低くなる傾向があり、遺産分割の評価額そのものではありません。

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場面別:どの評価額を見ればいいか

ここが本題です。3つのうち「どれが正しいか」ではなく、目的ごとに見る数字が決まっています。

相続税の申告 → 相続税評価額
土地は路線価方式か倍率方式、通常の建物は固定資産税評価額が基本です。

相続登記の登録免許税 → 固定資産税評価額
相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として固定資産課税台帳の価格を基礎に0.4%です。ただし、2027年3月31日までは、不動産の価額が100万円以下の土地など一定の相続登記について免税措置があるため、「必ず0.4%」とは限りません。手続きの流れは相続した不動産の名義変更を自分でやる5手順をご覧ください。

なお、相続によって不動産を取得した場合、不動産取得税は原則としてかかりません(購入や贈与で取得した場合とは扱いが違います)。ここを混同している解説をときどき見かけるので、注意してください。

きょうだいで分ける・代償金を決める → 実勢価格を確認するのがおすすめ
ここが一番ズレやすいところです。「固定資産税評価額で分ければ公平」と思いがちですが、それは税務上の評価であって、実際に売れる価格ではありません。一人が実家を取得し、もう一人が現金を受け取る形(代償分割)で固定資産税評価額を基準にすると、受け取る側が想定より少なくなることがあります。

ただし、法律上「必ず実勢価格でなければならない」わけではありません。家庭裁判所も、不動産の評価はまず当事者の合意で決めるものとし、その材料として固定資産税評価額・相続税評価額・公示価格・不動産会社の査定額などを挙げています。相続人全員が納得すれば、固定資産税評価額を合意の基準として採用することもできます(合意できない場合に、不動産鑑定士による鑑定へ進みます)。

大事なのは「どれが正しいか」を争うことではなく、全員が同じ数字を見て、納得して決めることです。分け方の選択肢は実家を兄弟で相続したときの分け方4つと注意点、話し合いが決裂した場合は遺産分割調停の進め方5ステップと費用の目安を参考にしてください。

売るかどうかを判断する → 実勢価格
売却時の税金は相続した家を売るときの税金3つと節税の特例にまとめています。税金・法律の具体的な判断は、税理士・司法書士など専門家に確認してください(相続税は税理士、登記は司法書士、遺産分割の争いは弁護士が相談先です)。

まとめ

相続した実家の評価額は1つではありません。固定資産税評価額(課税明細書・評価証明書で確認/税・登記用)/相続税評価額(路線価図・評価倍率表/相続税の申告用)/実勢価格(不動産情報ライブラリの事例+不動産会社の査定/売却・分け方の判断用)——金額が違うのは当たり前で、どれかが間違っているわけではありません。

今日できる一歩は、手元の固定資産税の納税通知書(課税明細書)を探すことです。この金額が、相続登記の費用計算にも倍率方式の計算にも使う出発点になります。きょうだいで分ける話をする前に実勢価格の見当までつけておくと、話し合いが数字の押し付け合いになりにくくなります。実家全体の進め方は実家じまいの進め方7ステップもご覧ください。

よくある質問

固定資産税評価額で兄弟に代償金を払ってもいいですか?

相続人全員が納得すれば、固定資産税評価額を合意の基準として採用することは可能です。家庭裁判所も、不動産の評価はまず当事者の合意で決めるものとしています。ただし固定資産税評価額は税務上の評価で、実勢価格との差が大きい場合もあるため、一度査定額も確認してから決めると安心です。

路線価図の「300」は300万円ですか?

いいえ。路線価図の数字は1㎡あたりの価格を千円単位で示しています。「300」なら1㎡あたり30万円です。数字の後ろのアルファベット(A〜Gなど)は借地権割合を表す記号で、価格そのものではありません。

実勢価格を無料で調べる方法はありますか?

国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、実際の取引価格や成約価格、地価公示などを無料で確認できます(旧・土地総合情報システムは2024年に移行しました)。ただし分かるのは近隣の似た物件の事例なので、実家そのものの価格を知りたい場合は、不動産会社の査定を複数取って比べてください。

参考にした公式情報

※制度の要件や評価の方法は改正や個別の事情により変わります。最新の情報は上記の公式情報や、税理士・司法書士・不動産鑑定士など専門家にご確認ください。

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