原野商法の土地を相続したときの3つの注意点

相続した土地

※この記事には広告を掲載していません。この分野は「処分できます」と費用を請求する二次被害が多く報告されているため、特定のサービスへの誘導はしていません。

親が亡くなって財産を整理していたら、見たこともない遠方の山林や原野の権利証が出てきた。聞けば、何十年も前に「将来値上がりする」と言われて買ったものらしい——。いわゆる原野商法です。1970年代から80年代にかけて被害が多発しました。

「自分が買った土地でもないのに、なぜ自分が処分で苦労しないといけないのか」。そう思うのは当然です。ただ、この土地で最初に気をつけるべきは、売り方ではありません。二度目の被害に遭わないことです。私は土地の取引や所有者の方とのやり取りに関わってきました。法律の専門家ではありませんが、消費者庁・国民生活センター・法務省の公開情報をもとに、相続した側が取るべき順番を整理します。

注意点1:向こうから来る「買い取ります」に、その場で応じない

原野商法で売られた土地の所有者(と、その相続人)を狙う二次被害が、今も続いています。国民生活センターへの相談は、2017〜2018年度の1,500件超からは減ったものの、2024年度も258件と年200〜300件のペースで続き、しかも1件あたりの平均支払額は約258万円(前年度の約110万円から再上昇)。被害額は小さくありません(2024年度の数値は2025年2月28日までのPIO-NET登録分です)。

そして重要なのは、国民生活センターが「原野を相続した消費者」の相談を明示している点です。これは親世代だけの問題ではなく、相続したあなた自身が狙われる話です。

よくある手口は、次のようなものです。

  • 「高く買い取ります」「買い手がもう決まっています」と電話やDMで接触してくる
  • 売却の前提として、測量・調査・整地・広告・媒介・手続きの費用を先に請求する
  • 売る代わりに別の原野を買わせる(下取り型)
  • 根拠のない管理費を請求する
  • 「節税対策になる」と言って別の土地を買わせる

この手の話が「相手から突然」来たときは、その場で契約も送金もしないでください。 国民生活センターは、宅地建物取引業の免許を持っていても安易に信用しないよう注意喚起しています。宅建業の免許があることだけでは、安全な会社とは判断できません。

もし契約してしまっても、諦めないでください。訪問販売や電話勧誘販売にあたる契約なら、原則として法定の書面を受け取った日から8日以内はクーリング・オフができます。また事実と違う説明を受けた場合などは、消費者契約法による取消しが問題になることもあります。8日を過ぎたらすべて終わり、ではありません。 まずは消費者ホットライン「188(いやや)」に電話して、最寄りの消費生活センターに相談してください。

注意点2:まず「どこの、どんな土地か」を確定させる

処分の方法を考える前に、土地そのものを把握します。相続人自身は現地を見たことがないケースもあります。土地に関わる仕事をしてきた経験からも、所在地番・境界・接道といった基本情報が分からないままでは、その先の話はまず進みません。

2026年2月2日から「所有不動産記録証明制度」が始まりました。 相続人は、登記上その人の名義になっている全国の不動産を一覧にした証明書を法務局に請求できます。「他にも知らない土地があるかもしれない」という不安には、まずこの制度が有効です(ただし登記上の氏名・住所が古いままの土地などは漏れることがあるため、万能ではありません。詳しくは所有不動産記録証明制度で親の土地を把握する3手順をご覧ください)。

あわせて、従来からの確認手段も使います。権利証(登記識別情報)/固定資産税の課税明細書/名寄帳/登記事項証明書/公図・地積測量図です。地番さえ分かれば、法務局で登記事項証明書や公図を取得できます。

このとき、よくある2つの誤解を解いておきます。

「価値がないなら固定資産税もかからないのでは?」——かからないこともあります。同じ市区町村内でその人が所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満なら、原則として固定資産税は課税されません(免税点)。ただし同じ市区町村に他の土地があれば合算されますし、条例による例外もあるため、実際の課税状況は納税通知書や自治体で確認してください。そして税金がかからなくても、所有権はそのまま残ります。

「価値がない土地なら、相続登記はしなくていいのでは?」——これは違います。2024年4月から、相続で不動産を取得した人は、原則としてそれを知った日から3年以内に相続登記をする義務があります。土地の価値による除外はありません。遺産分割がまとまらないなどで間に合わない場合は、相続人申告登記で基本的な義務を履行できます(相続登記しないとどうなる?放置5つのリスク)。

さらに山林の場合、相続登記とは別に「森林の土地の所有者届出」が必要になることがあります。地域森林計画の対象となっている森林を相続などで取得したときは、原則として所有者となった日から90日以内に、市町村長へ届け出る必要があります。登記上の地目が「山林」かどうかではなく、地域森林計画の対象森林かどうかで判断するため、所在地の市町村または都道府県の林務担当に確認してください。

注意点3:手放す方法は、この順番で検討する

その前に、必ず最初に確認してください。親が亡くなってから間がない場合は、「処分の方法」を考える前に、そもそも相続するかどうかの判断が先です。

相続放棄には、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内という短い期限があります。しかも相続財産の全部または一部を処分すると、相続を承認したとみなされる(法定単純承認)ことがあります。「とりあえず売れるか試してみよう」と動いた結果、相続放棄という選択肢そのものを失う可能性があるということです。

ただし相続放棄は土地1筆だけを選んでできるものではなく、預貯金も実家もまとめて相続しないことになります。迷うなら、動く前に弁護士・司法書士へ(相続放棄の前に知るべき5つのデメリット)。なお「相続放棄すれば誰でも管理義務が残る」という説明は現在は正確ではなく、民法940条で保存義務を負うのは放棄した時にその財産を現に占有している場合です(占有しているかどうかの判断は事案によるため、専門家に確認してください)。

以下は、相続する前提で土地を手放す場合の順番です。「どこかに引き取ってもらう」から始めると、二次被害の入口に近づきます。

① 普通に売れないか・隣接地の人に譲れないかを確認する

まずは一般的な方法を試します。立地や接道、境界、利用価値によっては、一般の不動産会社で取り扱ってもらえなかったり、買い手が長期間見つからなかったりすることがあります。ただし、隣接地の所有者や地元の事業者なら関心を持つ場合もあります。山林全般の出口は相続した山林を手放す4つの方法と注意点に整理しています。

② 自治体への寄附は、期待しすぎない

「市役所に寄附すればいい」と考える方は多いのですが、自治体に土地の寄附を受ける義務はありません。行政としての利用計画があるか、換価価値があるか、境界が確定しているか、抵当権などがないか、維持管理の負担が大きくないか——といった基準を設けている自治体が多く、「利用計画のない土地は受け付けていない」とする自治体もあります。受け付ける条件は自治体ごとに異なるので、所在地の自治体に確認してください(利用価値が低く管理負担が大きい土地ほど、寄附は難しい傾向です)。

③ 相続土地国庫帰属制度を確認する

売却や寄附が難しい場合の、有力な候補の一つです。法務省は「原野商法に関連する土地だというだけで、この制度を利用できないわけではない」と明記しています。 森林も申請できます(2026年8月末時点で、山林の申請は902件、森林の国庫帰属も203件の実績があります)。「山林だからどうせ通らない」は正確ではありません。

ただし要件はあります。建物がある/担保権などが設定されている/土壌汚染がある/境界が明らかでない、所有権の範囲に争いがある土地は申請の段階で対象外、管理に過分な費用がかかる崖や、手入れされておらず国の追加整備が必要な一定の森林は不承認になり得ます(詳しい要件は相続土地国庫帰属制度で土地を手放す3条件に整理しています)。

一方で、「道路に接していないから無理」とは限りません(問題になるのは、隣接地の所有者と争訟をしなければ通常の管理・処分ができないような場合です)。「木が生えている山林だから無理」でもありません。

費用は、審査手数料が1筆14,000円(却下・不承認・取下げでも原則返還されません)、負担金は原野や雑種地などが原則20万円。ただし森林は面積に応じて算定され、1,500㎡で約27万円、3,000㎡で約30万円といった水準です。山林をまとめて「20万円」と考えないでください。

税金・法律の具体的な判断は、税理士・司法書士など専門家に確認してください(契約トラブルは消費生活センター・弁護士、相続放棄は弁護士・司法書士、登記は司法書士、国庫帰属の申請は法務局・司法書士が相談先です)。

まとめ

原野商法の土地を相続したら、順番を間違えないことが大切です。①向こうから来る「高く買い取る」「測量すれば売れる」にその場で応じない②土地を特定し、期限を確認する(相続登記は3年、山林なら森林の所有者届出が90日)③相続開始から3か月以内なら、売却などに動く前に相続放棄を検討するかどうかを決める(処分すると相続を承認したとみなされることがあります)④相続する前提なら、売却・隣接地への譲渡 → 自治体寄附(期待しすぎない)→ 国庫帰属 の順で検討する。

今日できる一歩は、親の権利証や固定資産税の課税明細書を探して、土地の所在地番を書き出すことです。場所が分からないままでは、どの方法も検討できません。そして、もし今まさに業者から連絡が来ているなら、返事をする前に188へ。実家全体の進め方は実家じまいの進め方7ステップもご覧ください。

よくある質問

業者から「測量すれば売れる」と言われました。信じていいですか?

国民生活センターが二次被害の典型として注意喚起している手口です。測量費や広告費を先に支払わせ、結局売れないという相談が続いています。宅建業の免許があることだけでは、安全な会社とは判断できません。 その場で契約・送金をせず、まず188へ。すでに契約してしまった場合も、クーリング・オフや消費者契約法による取消しの可能性が残ることがあります。

山林でも相続土地国庫帰属制度は使えますか?

使える場合があります。法務省は、原野商法に関連する土地だというだけで制度を利用できないわけではないとしており、森林の国庫帰属にも実績があります。ただし境界が明らかでない土地などは申請できません。費用は審査手数料が1筆14,000円、負担金は原野・雑種地などが原則20万円で、森林は面積に応じた算定です。

固定資産税がかかっていないなら、放っておいていいですか?

よくありません。免税点に当てはまって課税されていなくても、所有権は残り、相続登記の申請義務もなくなりません(土地の価値による除外はありません)。放置すれば、次の世代に同じ問題をそのまま引き継ぐことになります。

参考にした公式情報

※制度の要件や金額は改正や個別の事情により変わります。最新の情報は上記の公式情報や、弁護士・司法書士・税理士など専門家にご確認ください。

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